ラベル 02 きみの微笑みが嬉しくて 第二章 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2018年6月2日土曜日

カツオの変化(2)

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 俺と賢策は、およそ2週間ぶりにいつものバーガーショップに立ち寄った。
 そして、いつもの席に座る。

 でも、いつもとは感じがちがっていた。
 カツオがいないだけでこんなにも違和感があるものなんだろうか?

 たぶん、それだけじゃない。
 俺がまだショックから醒(さ)めていないのがいちばんの理由なんだ。

「まさか、カツオがボクシングだなんて……」
 おもわずつぶやいていた。

2018年5月30日水曜日

カツオの変化(1)

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カツオの変化



 カツオとは幼なじみだ。
 フルネームは田中勝男(たなか かつお)――
 ボクシングの元ライトフライ級世界チャンピオン・渡嘉敷勝男(とかしき かつお)と名前が一緒だって本人は自慢げに言ってるけど、はっきり言って世界チャンピオンとはくらぶべくもない。

 カツオと初めて会ったときのことなんて覚えていない。
 家が近所で、俺たちは幼いときからいつも一緒だったんだ。

2018年5月29日火曜日

賢策の変化(2)

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 俺たちは変わったと思う。
 それは俺も認める。

 でもそれは、あくまでも内面的な変化であって、俺たちの生活はいままでと何も変わらない……はずだったんだ。

2018年5月26日土曜日

賢策の変化(1)

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賢策の変化



 ウチの学校を簡潔(かんけつ)に言いあらわすとしたら『その他大勢のザコキャラ集団』ってところだろう。
 何もかもが平均的で、際立(きわだ)ったものなんてない。

 すべてが平凡なこの学校で、須藤賢策は浮いた存在だった。
 それもそのはずで、もともと賢策はウチの学校なんかよりもずっとハイレベルな逸材(いつざい)なんだ。
 県内一の進学校に合格できるだけの学力があったし、しかも中学のときはサッカー部のキャプテンを務めていて、スポーツ推薦で名門校にはいることだって可能だったんだ。

 それなのに賢策は、あえてレベルを大幅(おおはば)にさげてこの学校を選んだ。

 その理由は、
「レベルをさげてはいれば楽をして上位の成績をたもてるし、それに僕、本当はあまりサッカー好きじゃないんだよね、走ってばかりで疲れるし」
 ということらしい。
 ま、いかにも賢策の考えそうなことだけどな。

2018年5月23日水曜日

笑顔の発信地

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笑顔の発信地



 俺たちは理由もなく笑い合い、休み時間を終えた。

 2時限目がはじまってからも、俺の上機嫌はずっとつづいていた。
 理由もなく楽しくてハッピーな気分だった。きっと賢策とカツオもおなじにちがいない。

 いや、ふたりとも俺より先にこの状態になってたんだ。
 遅刻せずにきたふたりは1時限目の前に上機嫌をはじめていて、だから恥ずかしげもなく俺に会うなり満面の笑顔でせまってくることができたんだ。

 暮咲さんの後ろ姿を見た。
 いつもだったら見ると少し切なくなるうつむいたその姿も、なぜだろう、いまはひたすらに愛(いと)しく思える。

2018年5月22日火曜日

これからは上機嫌でいく(2)

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 休み時間になった。

 俺は、ずっと暮咲さんの後ろ姿を見ていた。
 暮咲さんは休み時間になっても席を立たない。誰かと話をすることもなく、ずっとうつむいたままだった。
 そんな暮咲さんの姿を見ていると、俺はなぜだか胸が苦しくなるんだ。

 賢策とカツオが、俺のところへやってきた。
 そのこと自体はべつにいつものことなんだけど、ふたりともなんだか様子がおかしい。満面に笑みをたたえて俺のことを見ている。

「なんだよ、おまえら? 何がそんなにおかしいんだ?」

2018年5月19日土曜日

これからは上機嫌でいく(1)

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第二章




これからは上機嫌でいく



 小さいころの俺は、誰もが認める優等生だった。
 勉強もスポーツも得意で、小学校時代の成績は5段階評価でほとんどが5だった。

 両親は俺のことを天才児だと思いこみ、過剰な期待を寄せていた。
 将来は東大へ行き、その後はキャリア(上級官僚)の人間として出世するにちがいない。そんなことを自慢げに吹聴(ふいちょう)していた。

 でも俺に言わせれば「たまたま早熟だっただけ」ってことなんだ。
 同い年の子供とくらべて発達が早かったから、脳もほかの子供たちよりも発達していただけのこと。
 実際、小学生のころの俺は体が大きくて、上級生とケンカをしても楽勝なくらいだったんだ。