2019年2月12日火曜日

「きみはきれいだ」って言える男性は、幸せをつくる


今回は恋愛に関するエッセイです。

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 以前に、
「女を褒(ほ)めることに、なんの意味があるのかわからない」
 という男性と出会いました。

「女を軽々しく褒めると、調子に乗るだけだ」
 と、彼は頑(かたく)なに主張していました。

 価値観や考え方というものは人それぞれですので、どうしても女性を褒めたくないのであれば、それに対してとやかく言うことはできませんが……

 でも、心理的な観点から言って、やっぱり褒めたほうが賢明だと思います。
 褒めればそれだけ、喜び(快)が多くなりますからね。

 褒められた相手だけではなく、褒めた自分にとっても――


「きみはきれいだ」という言葉から生まれる幸せ


 恋愛、人間関係、コミュニケーションに関する心理研究の第一人者であるジョン・グレイ博士は、著書のなかで次のようなエピソードを紹介しています。

ビルとスーザンは結婚して9年――よくある夫婦のように、年月とともにビルは妻のことを褒めなくなり、妻・スーザンに対して無関心な態度をとるようになっています。

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 ある日、スーザンはよそ行きを着て夫の前に立った。
「私、どう?」

 ビルは、
「いいんじゃない」
 と言って、また向こうを向いてしまった。

 彼女はそこで、
「お願いがあるの」
 と言った。

「何だい」

「あなたに、私、どう? って聞いたら、きみはきれいだ、素敵だよ、って言ってくれないかしら」

「そんなことを言う気分じゃなくてもかい? それでも言ってほしいの?」
 とビル。

「ええ、言ってくれると嬉しいわ」

 ビルはちょっと冗談めかして言った。
「オーケー。君はきれいだ、素敵だよ」

 スーザンは、
「ありがとう。嬉しいわ」
 とお礼を言った。

 それからというもの、毎日のようにスーザンはビルに私どう見える? と尋ね、彼もそのたびに彼女をほめていた。

 三ヶ月ほど経った頃、彼女がまた同じことを尋ねた時、彼はいつもと違う返事をした。

「君はきれいだ、素敵だよ。でも今日は本気で言ってるんだ。君がこんなことを始めてくれてよかったよ。君がこんなにきれいだったなんて、いままで気づかなかった」

出典:『ジョン・グレイ博士の「大切にされる女(わたし)」になれる本』 ジョン・グレイ:著  大島渚:訳  三笠書房、知的生きかた文庫・わたしの時間シリーズ(2004年)
「4章 二人の愛をさらに深める魔法のルール」より引用。
ネット上で読みやすいように体裁(文章の見た目)を整えてあります。
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 それ以後、スーザンが頼まなくても、ビルは彼女を自分から褒めるようになったそうです。

 ビルになぜ、このような変化が起こったのでしょうか?


付き合いが長くなると、男性は無関心になりやすい


 潜在意識や暗示に関する知識のある人であれば、
「ビルは、毎日スーザンのことを『きれいだ』と言ったことで、自己暗示にかかったんだ」
 と、そのように思うかもしれませんね。

 もちろん、その可能性は否定できませんが、おそらく、真実はビルが言っているとおりだと思います。

 ビルは最後のところでこう言っていますね、
「いままで気づかなかった」
 と。

 男性は、結婚したり、付き合いが長くなったりすると、だんだん彼女のことを見なくなり、そっけない態度になる傾向があります。

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 結婚前には、男は精一杯愛しい女性の美しさをほめようとする。だが結婚してしまえば、自分が彼女に惹かれていることくらい、彼女は当然、承知しているはずだと決めてかかるようになる。

同書、同章より引用。
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 そして、男性は彼女を褒めることをおこたり、徐々に無関心になっていくんですね。
 付き合いが長くなると、男性はこれにおちいりやすいです。


女性を褒めると、褒めた男性も幸せな気持ちになれる


 先ほどのビルとスーザンのエピソードですが、ジョン・グレイ博士は、
「褒められることがいかに女性にとって大切か」
 という実例として紹介しています。

 ですが、このエピソード、
「男性が女性を褒めることは、女性ばかりでなく男性にとっても喜ばしいことである」
 という実例にもなっていますよね。

 最初はかたちだけの褒め言葉でしたが、それをつづけているうちに、ビルは妻の美しさに気づき、妻の素晴らしいところに意識が向くようになりました。

「思いだした」というほうが正確かもしれませんね。

 長年、妻にそっけない態度をとることで、ビルはスーザンの良いところに意識が向かなくなっていました。
 でも、褒めることでまた彼女の素晴らしさと、彼女を愛(いと)しく想う気持ちを思いだした――

 それがビルにおこったことだと思います。


「きれいだ」と言葉にして伝える効果


 彼女を見つめること、彼女を見守ることで、いつまでも変わらない恋心をもちつづけるのは可能だと思います。

 彼女のことをいつも気にかけて見ていれば、彼女の良いところや、彼女のちょっとした変化に気づくことができるので、褒めてあげることも容易になります。

 そして、彼女を褒めてあげることが、
「きみだけを見ている」
「きみのことをいつも見守っている」
 というメッセージになるので、彼女は『安心』と『喜び』を得ることができます。


 また、女性というのは、男性よりも言葉に対して鋭敏です。
 脳の構造からして、言葉(言語)に関する領域が、男性よりもずっと多いんですね。

 つまり、女性を喜ばせたり、女性に好意を伝えるには、
『言葉』を使うこと
 それがもっとも確実だということです。

 言わなくても彼女はわかっている――
 という考え方は、男性がおちいりがちな「思いちがい」です。

 もし、彼女のことを、
「きれいだ」
「かわいい」
「愛(いと)しい」
 そう思っているのであれば――

 素直に、その言葉を口にだして伝えてあげましょう。
 何度でも、毎日でも、伝えてあげましょう。

 秘めることなく言葉にするだけで、相手も、自分も、幸せな気持ちになれるのですから。


褒め上手な人は、幸せをつくる人


 褒め上手(じょうず)な人は、相手の良い面に気づくのが上手な人です。
 褒められた相手はとうぜん気分が良いですし、相手の良い面に意識を合わせている自分もまた、気分が良くなります。

 相手の良いところに気づいて、好意的な気持ちで褒めてあげる――

 それは、相手の心にも、自分の心にも、肯定感(快)を呼び起こしてくれるとても冴(さ)えたやり方です。

褒め上手な人は、「幸せをつくる人」

 僕は、そう思うんだ。


このエッセイは、本条克明が以前に運営していた『本条克明ライターズブログ』というサイトに掲載した記事を改訂したものです。

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