※今回は恋愛に関するエッセイです。
***
以前に、
「女を褒(ほ)めることに、なんの意味があるのかわからない」
という男性と出会いました。
「女を軽々しく褒めると、調子に乗るだけだ」
と、彼は頑(かたく)なに主張していました。
価値観や考え方というものは人それぞれですので、どうしても女性を褒めたくないのであれば、それに対してとやかく言うことはできませんが……
でも、心理的な観点から言って、やっぱり褒めたほうが賢明だと思います。
褒めればそれだけ、喜び(快)が多くなりますからね。
褒められた相手だけではなく、褒めた自分にとっても――
「きみはきれいだ」という言葉から生まれる幸せ
恋愛、人間関係、コミュニケーションに関する心理研究の第一人者であるジョン・グレイ博士は、著書のなかで次のようなエピソードを紹介しています。
※ビルとスーザンは結婚して9年――よくある夫婦のように、年月とともにビルは妻のことを褒めなくなり、妻・スーザンに対して無関心な態度をとるようになっています。
************
ある日、スーザンはよそ行きを着て夫の前に立った。
「私、どう?」
「私、どう?」
ビルは、
「いいんじゃない」
と言って、また向こうを向いてしまった。
彼女はそこで、
「お願いがあるの」
と言った。
「何だい」
「あなたに、私、どう? って聞いたら、きみはきれいだ、素敵だよ、って言ってくれないかしら」
「そんなことを言う気分じゃなくてもかい? それでも言ってほしいの?」
とビル。
「ええ、言ってくれると嬉しいわ」
ビルはちょっと冗談めかして言った。
「オーケー。君はきれいだ、素敵だよ」
スーザンは、
「ありがとう。嬉しいわ」
とお礼を言った。
それからというもの、毎日のようにスーザンはビルに私どう見える? と尋ね、彼もそのたびに彼女をほめていた。
三ヶ月ほど経った頃、彼女がまた同じことを尋ねた時、彼はいつもと違う返事をした。
「君はきれいだ、素敵だよ。でも今日は本気で言ってるんだ。君がこんなことを始めてくれてよかったよ。君がこんなにきれいだったなんて、いままで気づかなかった」
出典:『ジョン・グレイ博士の「大切にされる女(わたし)」になれる本』 ジョン・グレイ:著 大島渚:訳 三笠書房、知的生きかた文庫・わたしの時間シリーズ(2004年)
※「4章 二人の愛をさらに深める魔法のルール」より引用。
※ネット上で読みやすいように体裁(文章の見た目)を整えてあります。
************
それ以後、スーザンが頼まなくても、ビルは彼女を自分から褒めるようになったそうです。
ビルになぜ、このような変化が起こったのでしょうか?
付き合いが長くなると、男性は無関心になりやすい
潜在意識や暗示に関する知識のある人であれば、
「ビルは、毎日スーザンのことを『きれいだ』と言ったことで、自己暗示にかかったんだ」
と、そのように思うかもしれませんね。
もちろん、その可能性は否定できませんが、おそらく、真実はビルが言っているとおりだと思います。
ビルは最後のところでこう言っていますね、
「いままで気づかなかった」
と。
男性は、結婚したり、付き合いが長くなったりすると、だんだん彼女のことを見なくなり、そっけない態度になる傾向があります。
************
結婚前には、男は精一杯愛しい女性の美しさをほめようとする。だが結婚してしまえば、自分が彼女に惹かれていることくらい、彼女は当然、承知しているはずだと決めてかかるようになる。
※同書、同章より引用。
************
そして、男性は彼女を褒めることをおこたり、徐々に無関心になっていくんですね。
付き合いが長くなると、男性はこれにおちいりやすいです。
女性を褒めると、褒めた男性も幸せな気持ちになれる
先ほどのビルとスーザンのエピソードですが、ジョン・グレイ博士は、
「褒められることがいかに女性にとって大切か」
という実例として紹介しています。
ですが、このエピソード、
「男性が女性を褒めることは、女性ばかりでなく男性にとっても喜ばしいことである」
という実例にもなっていますよね。
最初はかたちだけの褒め言葉でしたが、それをつづけているうちに、ビルは妻の美しさに気づき、妻の素晴らしいところに意識が向くようになりました。
「思いだした」というほうが正確かもしれませんね。
長年、妻にそっけない態度をとることで、ビルはスーザンの良いところに意識が向かなくなっていました。
でも、褒めることでまた彼女の素晴らしさと、彼女を愛(いと)しく想う気持ちを思いだした――
それがビルにおこったことだと思います。
「きれいだ」と言葉にして伝える効果
彼女を見つめること、彼女を見守ることで、いつまでも変わらない恋心をもちつづけるのは可能だと思います。
彼女のことをいつも気にかけて見ていれば、彼女の良いところや、彼女のちょっとした変化に気づくことができるので、褒めてあげることも容易になります。
そして、彼女を褒めてあげることが、
「きみだけを見ている」
「きみのことをいつも見守っている」
というメッセージになるので、彼女は『安心』と『喜び』を得ることができます。
また、女性というのは、男性よりも言葉に対して鋭敏です。
脳の構造からして、言葉(言語)に関する領域が、男性よりもずっと多いんですね。
つまり、女性を喜ばせたり、女性に好意を伝えるには、
『言葉』を使うこと
それがもっとも確実だということです。
言わなくても彼女はわかっている――
という考え方は、男性がおちいりがちな「思いちがい」です。
もし、彼女のことを、
「きれいだ」
「かわいい」
「愛(いと)しい」
そう思っているのであれば――
素直に、その言葉を口にだして伝えてあげましょう。
何度でも、毎日でも、伝えてあげましょう。
秘めることなく言葉にするだけで、相手も、自分も、幸せな気持ちになれるのですから。
褒め上手な人は、幸せをつくる人
褒め上手(じょうず)な人は、相手の良い面に気づくのが上手な人です。
褒められた相手はとうぜん気分が良いですし、相手の良い面に意識を合わせている自分もまた、気分が良くなります。
相手の良いところに気づいて、好意的な気持ちで褒めてあげる――
それは、相手の心にも、自分の心にも、肯定感(快)を呼び起こしてくれるとても冴(さ)えたやり方です。
褒め上手な人は、「幸せをつくる人」
僕は、そう思うんだ。
※このエッセイは、本条克明が以前に運営していた『本条克明ライターズブログ』というサイトに掲載した記事を改訂したものです。
※「褒める」に関するほかのお話
→男性は、こういう褒め方をされると嬉しい
※ほかの恋愛エッセイはこちらからお探しください
→99 エッセイ(恋愛) (ラベル)
更新
2024年1月7日 記事内の広告を削除。