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努力の成果
最後の恋愛講義をおこなうため、
賢策と幸坂美冬は空(あ)き教室へやってきた。
いままでと同様、
賢策が教壇に立ち、
幸坂美冬は席につく。
美冬の顔には明るい笑みがひろがっている。
とてもいい表情だ。
血色もよく、
頬(ほお)が健康的な桃色になっている。
賢策と幸坂美冬は空(あ)き教室へやってきた。
いままでと同様、
賢策が教壇に立ち、
幸坂美冬は席につく。
美冬の顔には明るい笑みがひろがっている。
とてもいい表情だ。
血色もよく、
頬(ほお)が健康的な桃色になっている。
「今日の幸坂は、とてもいい顔をしてるね」
「そうですか? なんだか恥ずかしいです。わたし、あまり褒(ほ)められたことがないから」
「この講義で教わったことが、しっかりと身についているみたいだね。安心したよ」
「この講義で先生から教えてもらったことは、何度も思い返して復習してます。イメージ法も毎日やっています。『幸せな恋愛』、『ごめんね』、『ありがとう』のイメージをローテーションさせて、くり返しおこなっています。
そんな生活をつづけているうちに、幸せな気持ちがずっとつづくようになったんです。自分でも不思議(ふしぎ)なんですけど、理由もなくいつも機嫌がよくて、それがあたりまえのようになってきてるんです」
「べつに不思議じゃないよ。『幸せな恋愛』に意識の焦点を合わせつづけたことで、幸坂の心にはびこっていた否定感が払拭(ふっしょく)されて、代わりに自分や恋愛に対する肯定感が心のなかを満たすようになったんだ。
潜在意識のなかが肯定感で満たされているのだから、ハッピーな気持ちが常態(じょうたい)になるのはとうぜんのことだよね」
「わたしいま、恋愛に関することだけじゃなく、すべてのことに対して前向きになってるんです。
わたし、また小説を書くようになったんですよ」
「小説?」
「わたし、物語が好きで、小学生のときから小説を書いていたんですけど、でも三つ年下の妹がわたしの真似(まね)をして小説を書くようになって、それ以来、書くのをやめていたんです。
わたしの妹、ちょっと天然系の変わった子なんですけど、でもその独特の感性は、物語をつくるときには『才能』として発揮されて、びっくりするような話を書くんです。それでわたし、すっかり自信がなくなってしまって、ずっと書いていなかったんです。
でも、先生に教わったことを毎日つづけていくうちに、理由もなく幸せな気持ちでいられるようになって、また『書いてみよう』って気持ちになれたんです」
「それは『いま幸せ』が身についた証(あかし)だよ。『いま幸せ』は、はじめる勇気を与えてくれるんだ」
「これもみんな、先生のおかげです」
「いいや、幸坂が努力したからだよ。
それじゃ、今日は最後の話をするよ。本題についてはもう話したから、今回は補足の話だ」
「補足の話、ですか?」
「恋愛をより深く理解するためのアドバイスってところだね。
知っておくと役に立つから、よく聞いて理解してほしいな」
「はい」
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