2019年3月8日金曜日

6 メールのやりとりは「会いたい」という想いのさまたげになるのか?

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6 メールのやりとりは「会いたい」という想いのさまたげになるのか?



「僕からのアドバイスは以上だよ。何か質問は?」

「……えっと、それじゃ、ひとつだけ」

「なんだい?」

「女性のほうからメールをすることで、メールのやりとりがうまくいくようになったと仮定して――
 彼はメールでのコミュニケーションで満足してしまい、彼女に会いたいと思わなくなる可能性はありませんか?」

「いい質問だね! 着眼点がすばらしいよ。事前に想定しておくべき問題だからね。
 たしかに、その可能性はゼロじゃないよね。現代人のなかには、直接相手に会うよりも、メールやネット上でのコミュニケーションを好(この)む人が少なくないからね。
 といっても、相手が恋人や好意をいだいている異性の場合は、メールでのやりとりだけで満足する可能性は低いと言えるよね。
 それどころか、メールでのやりとりによって『直接会って話したい』という欲求が高められていくことのほうが、ずっと多いんだよ」

「そうなんですか?」

「そうだよ。メールだとノンバーバル情報を交換できないからね」

「のんばぁ……?」

「ノンバーバルというのは、『非言語』って意味だよ。
 人は誰かとコミュニケーションをとるとき、言語だけを使っているわけじゃない。表情や、目線や、仕草(しぐさ)や、声のトーンなどのノンバーバル――非言語を使うことで、言葉では伝えきれない感情やニュアンスを相手に伝えているんだ。
 でも、メールでのやりとりの場合は――」

「文字だけで表現するから、言葉に込めた感情が充分に伝わらないんですね」

「そう、そのとおりだよ!
 受けとったほうは言葉の意味しかわからないから、その言葉に込められた相手の想(おも)いが気になってしまう。
 送ったほうもまた、相手の反応が見えないから、自分の言葉がどのように受けとめられたのか気になってしまう。
 メールでのコミュニケーションというのはもどかしさをともなうものなんだ。
 そしてこのもどかしさは、『直接会って話したい』という想いを深めてくれるんだよ」

「なるほど……納得しました!」

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「ほかに何か質問は?」

「……いえ、ありません」

「オーケー、それじゃ今回の恋愛相談はここで終了しよう。もう充分に回答したしね。いや、充分すぎるくらいだったかな」

「須藤先輩……今日はわたしの相談に答えてくださって、ありがとうございました。
 先輩のお話、とても励(はげ)みになりました。今日ここで先輩に教えてもらったことを何度も思い返して、しっかりと心に刻(きざ)みつけます。
 いまはもう、彼がメールや電話をしなくなる理由がわかったから、落ち込んだりやきもきしたりすることなく、肯定的な気持ちで彼とやっていけそうな気がします。
 本当に、ありがとうございました!」

「僕のほうこそ、ありがとう。
 素直(すなお)な心で聞いてくれたから、アドバイスしやすかったし、すごく嬉しかったよ。
 ――それじゃ、幸せな恋愛を」



 〈完〉


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