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「それじゃもうひとつ、重要なことを」
賢策は、黒板に書き記(しる)した。
●彼からのメールがきたら、
感謝の気持ちとその喜びを伝える
「感謝の言葉でその喜びを伝える――
これはね、メールにかぎったことではなく、男性と良好な関係をきずく秘訣(ひけつ)とも言えることなんだよ」
「感謝の言葉、ですか……」
「男性はね、『自分がしてあげたことによって女性が喜んでくれる』ということが何よりも嬉しいんだよ。
だから、女性に感謝されると、男性は深い喜びで満たされる。
これは、能力や結果を重んじる男性の心理傾向がポジティブに働いている状態なんだ。
男性のマインドは、自分の力で成功を勝ちとることを潜在的に求めている。自分の力で解決したり達成したりすることに喜びを感じる。
だから、女性に感謝されると、男性は『彼女を幸せにしている』、『おれの恋愛は成功している』と実感できるんだ。
そして、男性としての自信と喜びで満たされるんだよ」
「たしかに、先輩の言うとおりだと思います。
……わたしたちの恋愛を振り返ってみると、最近は、感謝の気持ちをあまり彼に伝えていなかったような気がします。
付き合いはじめたころは、ちょっとしたことでも『ありがとう』を言っていました。
彼が荷物をもってくれたり、自動販売機でジュースを買ってくれたり、髪型や服装を褒(ほ)めてくれたり、わたしを気づかう言葉をかけてくれたり――そんな些細(ささい)なことでも嬉しくて、自然と『ありがとう』の言葉がでてきました。
でも最近は、そういったことをしてもらっても、感謝の言葉を口にしていなかったように思います。
もしかするとわたしは、彼の優(やさ)しさに慣れてしまっていたのかもしれません」
「だとしたら、もっと意識的に感謝の言葉を伝えるようにしたほうがいいよね。
男性は、女性に感謝されることで『どうすれば彼女を喜ばせることができるのか』ということを、体験的に学習しているんだよ。
だから、もし彼からのメールがきたときは、『メールしてくれて嬉しい。ありがとう』という想(おも)いを、彼に伝えるように心がけてごらん。
それによって彼は、『そうか、こっちからメールをすると喜んでくれるのか』と体験的に気づくことができる。
男性は、彼女が喜んでくれるとわかったら、おもいのほか積極的に行動するようになるものなんだ。『彼女を喜ばせることに成功したい』という欲求を潜在的にいだいているからね。
もし彼が、相内さんがしてほしいことをしてくれたときには、感謝の気持ちをしっかりと伝えるようにしてごらん。
そうすることによって、彼はますます、それをしてくれるようになるはずだから」
「先輩の話を聞いているうちに、なんだか勇気がわいてきました。
いまのわたしなら、できるような気がします。付き合いはじめたころは、ちゃんとできていたことですもんね。
あのころみたいに、彼のひとつひとつの優しさに『ありがとう』を伝えればいい――たったそれだけのことですもんね」
「そうだね、それだけのことだよね。
たったそれだけのことだけど、女性が思っている以上に、男性を喜ばせる力があるんだよ。女性の『ありがとう』にはね」
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