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5 彼とコミュニケーションを楽しむために
「それじゃ最後に、『女性のほうからメールをするときに、ぜひ心がけてほしいこと』について、ふたつほどアドバイスしておくよ」
賢策はチョークを手にとり、
黒板に書き記(しる)した。
黒板に書き記(しる)した。
●男性に伝わりやすい言葉、
男性にとって心地よい文章で書く
「まずひとつ目は、『男性に伝わりやすい言葉で、男性が心地(ここち)よく感じる文章にして書く』ということ」
「男性が心地よく感じる文章、ですか……」
「じつは、女性の言葉の使い方や話の進め方は、男性を不快にさせやすい。
男性にとっては、まわりくどい言いまわしに感じるからね。『だから何が言いたいんだよ』とイラついてしまうくらいに、男性は女性の話し方を不快に思うことがよくあるんだよ」
「ううぅ……思いあたるふしがいっぱいあります……。
彼と話をしていると、彼がだんだん不機嫌になってきて『それでけっきょく何が言いたいんだ』って、わたしの言葉をさえぎることがよくあるんです。
やっぱり、わたしの話し方が気にいらなかったんですね……」
「ま、それはおたがいさまだけどね。女性のほうでも、男性の言葉の使い方や話し方に不満をもっていることがよくあるからね。
男性の言葉の使い方は、会話をしていてもみじかく相づちを打つだけだったり、結論を簡潔(かんけつ)に言うだけだったり、必要最低限の言葉しか口にしない。
男性のその効率主義的な話し方は、女性にはひどく無愛想(ぶあいそう)に感じる。ときには自分のことをないがしろにされているとさえ思ってしまうんだ」
「それもまた、わたしたちに当てはまります。口数(くちかず)が少なくなりがちな彼に対して『もっとちゃんと会話をしてほしい』という不満が、わたしのなかにあります。
ちゃんと会話をしてくれないと、一緒にいるのにひとりぼっちのように思えてきて、なんだか悲しくなってくるんです……」
「そうだね、女性にしてみればそのとおりだよね。
そしてその摩擦(まさつ)は、男女のマインドのちがいによって起こってるんだ。
女性のマインドは、親(した)しい相手と会話をするとき、言葉のやりとりや、それによって深まるコミュニケーションを楽しんでいる。話すことそれ自体を楽しんでいる、と言ってもいいよね。
女性の場合は、脳の構造からして言語に関する領域が男性よりも多いからね。話すこと、会話をすること、それ自体に快(かい)を感じるようにできているんだ。
話すことでストレスが発散されたりもする。
だからどうしても、女性は会話をするときに言葉数が多くなってしまいがちなんだ。でも――」
「彼にとっては、不快なんですね……」
「そう。男性のマインドは能力や結果を重視しているからね。言葉の使い方にも効率の良さを求めてしまう。
つまり、結論だけを手短(てみじか)に伝えるのがいい言葉の使い方だと思っているんだよ」
「女性と男性では、そんなにもちがうんですね……」
「だいじょうぶ、むずかしく考えることなんてないよ。この摩擦は、男女の言葉の使い方を理解することで解消できるんだからね。
そしていま、相内さんは僕の話を聞いてこのことを理解した。だから何も心配はいらない。だいじょうぶだよ」
「……具体的には、どうすればいいんですか?」
「ま、要するに、男性とおなじような言葉の使い方をすればいいってことだよね。
話が脱線したりまわりくどい言いまわしにならないように、できるだけ簡潔に、手際(てぎわ)よく要点を伝える話し方を心がける。
メールの場合は、送る前に書いた文章を見直して、はぶけそうなところは目一杯(めいっぱい)はぶくようにしてごらん。それでかなり男性にとって心地よい文章になるはずだよ」
「それだったら、できそうな気がします。わたし、こう見えても文芸部員ですから文章の推敲(すいこう)には慣れてるんです。
書いた文章を見直してむだをはぶき、文章をスッキリさせる――それって、わたしがいつもやっていることですもんね。
それなら、わたしにもできそうな気がします。いえ、きっとできると思います!」
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※推敲(すいこう)……文章を読み返して練(ね)り直すこと。おもに文章表現や、言葉の使い方を手直しするという意味で使われます。
字の誤り(誤植)を訂正する、という意味で文章の手直しをするときは、「校正(こうせい)」という言葉が使われます。