2018年11月23日金曜日

モテるってどういうことだと思う?(3)

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 幸坂美冬は驚いた表情のまま固まっている。
 やがて、叱られた子供みたいにうつむき、黙りこんでしまった。
 この様子では、自分で答えをだすことなどできそうにない。

「いいかい、モテるってことは――」
 声が熱くなりかけている。
 落ちつけ、クールに諭(さと)すんだ――賢策は自分に言い聞かせる。
「モテるってことは、複数の異性に好かれるってことなんだ。でも、恋人として交際する相手はひとりだけ――つまり、モテるってことは、自分を好きになってくれた人たちを傷つけるということなんだ!」

 最後のフレーズは、おもわず熱くなった。

 幸坂美冬は唖然(あぜん)となっている。
 やはり『モテる』という意味を考えたことがなかったのだろう。かなりの衝撃を受けたようだ。

「いいかい、よく聞きなよ。『モテたい』という願望は、『自分を好きになってくれた人を傷つけたい』とおなじ意味なんだ。
 それでもきみはまだ、モテたいって思うのかい?」

「…………」

「きみは、自分を好きになってくれた人を傷つけて喜ぶような人間なのかい?」

「……………………」

 幸坂美冬は、呆然(ぼうぜん)と立ちつくしている。

「きみはいま、モテるということの本当の意味を知った。それでもまだモテたいと言うのなら、きみの力になる気はない。二度と僕の前にあらわれないでほしいな」

 賢策は踵(きびす)を返し、クールな足どりでこの場をあとにした。

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