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恋愛にはプロセスがある 〈講義〉
「いいかい、両想いになるには相応のプロセスがあるんだよ。
まずは、そのプロセスをしっかりと理解しよう。重要なことだからね」
「……はい」
「いいかい、男女が親密になり、両想いになるには――」
賢策はチョークを手にとり、
黒板に書き記(しる)した。
黒板に書き記(しる)した。
1 無接触の段階
2 一方的な気づきの段階
3 表面的な接触の段階
4 相互性の段階
2 一方的な気づきの段階
3 表面的な接触の段階
4 相互性の段階
「この四つの段階を経るというのが、心理学で説いているプロセスなんだ」
「……先生、なんだか言葉が専門的でよくわかりません」
「そうだね、僕もそう思うよ。
ま、要するに、『なんでもないふたりから、どちらかいっぽうが先に好きになって、そこからコミュニケーションをとる機会が増えて、互いに心をゆるし合うようになって、想いがひとつになる』ってことだよね」
「たしかに、そのとおりだと思います」
「このプロセスで重要なポイントは――」
賢策は赤いチョークを手にとり、
2 一方的な気づきの段階
のところに波線を引いた。
2 一方的な気づきの段階
のところに波線を引いた。
「『ふたりのうちどちらかが先に好きになる』ってことだよね。
あたりまえのことだけど、ふたり同時に一目惚(ひとめぼ)れでもしないかぎり、どちらかいっぽうが先に好きになるんだからね。
でも、ふたり同時に一目惚れなんてことは、めったに起こることじゃないよね」
「そうですね」
「ということは――」
賢策は赤いチョークで、
黒板に書き記す。
黒板に書き記す。
好きになった人に、好きになってもらう
好きになってくれた人を、好きになる
好きになってくれた人を、好きになる
「このどちらかしか両想いになる道はないってことなんだ」
「たしかにそうですね……言われてみればあたりまえのことですけど、いままで考えたこともなかったです」
「そう、それがつまずく原因なんだ。ちゃんと考えていればなんでもないことを、無自覚なために正しくない行動をとってしまう。
恋愛にはプロセスがあるということを理解していれば、いきなり告白をするなんて愚行をおかしたりはしない。そんなことをしたら、相手はひいてしまうからね」
「うぅ……おもいっきり思いあたりますぅ」
「簡単に言うとね、『好きな相手に対して、好意をいだいていることをさりげなく伝えよう』ってことなんだよ。
あくまでもさりげなくね」
「さりげなくって、どうやればいいんですか?」
「表情や、仕草(しぐさ)や、眼差しや、なにげない言葉のなかにそっと好意をこめるんだよ」
「……わたしには、ハードルが高そうです」
「だいじょうぶ。僕のアドバイスを最後までちゃんと聞けば、できるようになるよ。ラブマスターを信じなよ」
「……はい、信じます。わたし、もう片想いは嫌だから」
「その気持ちはわかるよ。
でもね、さっきも言ったけど、恋愛のプロセスではどちらかいっぽうが先に好きになるんだ。つまり、片想いからはじまるってこと。
そこから両想いになるためには、自分の好意を上手(じょうず)に伝えられるようにならないとね」
「はい」
「好意を伝えることに成功したら、相手は幸坂のことを意識するようになる。どんな男だろうと『この子、俺のことが好きなのかな』と感じたら、意識せずにはいられないからね。
意識した結果、幸坂のことを好きになってくれるとはかぎらないけど、まずは相手に意識してもらうことが両想いへのスタートになる。
このプロセスは、しっかりと理解しておかないとね」
「はい」
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