2018年12月4日火曜日

理想の恋愛のヴィジョンをもつ 〈講義〉(1)

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理想の恋愛のヴィジョンをもつ 〈講義〉



「それじゃ次は『王道』のための前段階の話をするよ。
 よく聞いて理解するように」

「……前段階、ですか?」

「この前段階は、とても重要なんだよ。幸坂の場合は特にね」

「そうなんですか?」

「そうだよ。潜在意識には、現状を維持しようとする性質があるのだからね」

「現状を維持……」

「幸坂、きみはいままでに恋を成就(じょうじゅ)させたことはあるのかい?」

「……いいえ」

「そう、きみには片想いの経験しかない。ひとりぼっちの寂しさしか知らない。そして潜在意識には現状を維持しようとする性質がある。
 つまり、幸坂の無意識は『うまくいかない恋愛』のパターンをくり返そうとするんだ。
 足を引っ張っているのは自分自身――これじゃどんなに努力したって恋を実らせるのはむずかしいよね」

「……嫌です、そんなの」

「そうだね。だからこそこの前段階が必要なんだよ。潜在意識の性質を克服するためにね」

「わかりました。わたし、うまくいかない恋愛をくり返すなんて絶対に嫌です! 教えてください、その前段階を!」

幸坂美冬は強い口調で言った。

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