2018年12月14日金曜日

相手が自分にふさわしいのかどうか、どうすればわかるのか? 〈美冬の質問〉

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相手が自分にふさわしいのかどうか、どうすればわかるのか? 〈美冬の質問〉



「それじゃ、今回の講義はこれで終わりにしよう。
 何か質問はあるかい?」

「えっと、あの……ひとつだけいいですか?」

「なんだい?」

「さっきやった『ラブラブな恋愛』のイメージは、とても楽しかったです。幸せな気持ちが胸にわきあがってきました。
 でも、わたしにはいま好きな人とかいないから、相手の男性のイメージがはっきりと思い浮かびませんでした。先生は『それでいい』って言ってくれましたけど、やっぱりちょっと不安です。
 わたし、男性と会ったときに、相手がわたしにふさわしいのかどうか、ちゃんとわかるのでしょうか?」

「いい質問だね!
 さっき僕は、『相手の姿は輪郭(りんかく)のはっきりしない影のような姿でかまわない。むしろそのほうが好ましい』って言ったよね。
 この質問に対する答えは、そのことにも関係しているんだ。いいことを訊(き)いてくれたよ」

「そ、そうですか……わたし、あまり褒(ほ)められたことがないので、そんな言い方をされると、ちょっと恥ずかしいです」



「異性と出会ったときに、その人が自分にふさわしいのかどうか、どうすればわかるのか?
 これに対する答えはね、『とにかく、わかるもの』なんだよ」

「……………………」

「どうしたんだい、そんな顔して? もしかして、『答えになってない』と思ってるのかい」

「……はい」

「たしかに、そう思うのもムリはないよね。ちゃんと質問に答えてない、と言えばそのとおりだしね。
 でもね、これについては本当にそうなんだよ。
 幸せな恋愛をしている人、自分にふさわしい相手と付き合っていると言い切れる人――そういった人たちにこの質問をすると、みんなこう言うんだ。『うまく言えないけど、とにかくわかるものなんだ』ってね。
 理由とか、理屈とか、そういったことは抜きで『この人だ』と直感的にわかるものなんだ」

「そうなんですか……わたし、そういう経験がないから、正直、信じられないです」

「それはね、幸坂はまだそういう異性と出会えてないからだよ。ただそれだけのこと。引け目を感じたり、不安になったりする必要はどこにもないよ。
 でもね、自分にふさわしい相手に出会えているにもかかわらず、『この人だ』と気づくことができないケースもたしかにある。それは事実だよ。
 そして、気づきをさまたげる要因としてもっとも多いのが、『相手のイメージを固定している』ということなんだ」

「イメージを固定……」

「相手の容姿であったり、肩書きであったり、経済力であったり――自分にふさわしい異性のイメージを『こうだ』と決めつけてしまうと、『運命の人』に出会えたとしても、気づけない可能性が高い。
 自分の都合(つごう)でつくりあげた理想の異性像と、現実の『自分にふさわしい異性』とでは、少なからずギャップがあるものだからね」

「あ、そうか! だから、イメージをするときは、相手の姿をはっきりと思い浮かべないほうがいいんですね。わたしのなかで、理想の男性のイメージが固定されてしまうから」

「そう、そのとおりだよ。
 イメージを固定している人は、そのイメージどおりじゃない異性はすべて『ちがう』と判断してしまう。本当は自分にぴったり合う異性が身近(みぢか)にいるにもかかわらず、自分の都合でつくりあげた理想像にとらわれて、貴重な出会いを台無しにしてしまう。
 そうならないためにも、相手のイメージは固定しないほうがいいんだよ」

「なるほど……」

「どういう男性が幸坂にぴったり会うのか――それは誰にもわからない。
 だけど、実際に出会えたときには、『この人だ』とわかってしまうものなんだ。
 つまらないこだわりや、偏見をもたずに、ただ心をひらいていればいい。
 そのときがきたら、ちゃんと『直感』が教えてくれるから、何も心配はいらないよ」


「ほかにもまだ、質問はあるかい?」

「……いえ、もうないです」

「オーケー。それじゃ今日はここまでにしよう。つづきはまた次回に」

「あ、はい! 今日はありがとうございました!」

「今日、僕が話したことを何度も思い返して、しっかりと復習しておくようにね」

「はい!」



 こうして、1回目の恋愛講義は終了した。

 次回は、1週間後――
 またこの空(あ)き教室でおこなうことを告げて、賢策は幸坂美冬とわかれた。

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