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『幸せな恋愛』のイメージ法 〈講義〉
「理解も深まったようだし、それじゃ、さっそくやってみようか」
「えっ!? やってみようかって言われても……」
「簡単だよ、『ラブラブな恋愛をしている自分』をイメージすればいいんだ」
「ラブラブな恋愛って……急にそんなことを言われても、イメージできないです」
「しかたないなぁ……それじゃ、僕が誘導してあげるから、僕の言うとおりにイメージして」
「はい」
幸坂美冬は目をとじた。
賢策は、
ゆったりとした穏(おだ)やかな口調で、
イメージを誘導する。
ゆったりとした穏(おだ)やかな口調で、
イメージを誘導する。
「……いま、きみは、大好きな男性と一緒にいる――頭のなかでイメージして」
「……うまくイメージできないです。わたし、いま好きな人とかいないから、相手の男性がはっきりと思い浮かびません」
「それでかまわないよ。
相手の姿が鮮明である必要はない。輪郭(りんかく)のはっきりしない影のような姿でもかまわない。
いや、むしろそのほうが好ましいと言えるんだ」
「そうなんですか?」
「いいかい。肝心(かんじん)なのはね、幸坂、きみ自身のイメージなんだよ」
「わたし、ですか……?」
「そう、自分を重点的にイメージするんだよ。
大好きな人といるときの自分の姿、そのときの気持ち、感情――それに意識の焦点をあててイメージしてごらん」
「……はい」
「それじゃ、つづけるよ」
賢策は、
ゆったりとした口調で、
イメージを誘導する。
ゆったりとした口調で、
イメージを誘導する。
「その大好きな男性と、きみは、交際している……まだ付き合いはじめたばかりの初々(ういうい)しいカップルだ……
きみと、彼は、とても仲がいい……
まわりの人たちが羨(うらや)ましいって思うくらいに、とても仲がいい」
「…………」
「いま、きみと彼は、目を見つめ合っている……
とても、とても、愛(いと)しそうな目で、お互いに、目を見つめ合っている……」
「なんだか、恥ずかしいです……」
「でも、心地よいよね?」
「はい……恥ずかしいけど、嬉(うれ)しい……」
「それじゃ、つづけるよ。しっかりイメージして」
「はい」
「きみは、大好きな彼と、目を見つめ合っている……
彼は、きみの目を見つめたまま、やさしい笑みを浮かべている……
その笑顔を見たきみは、なんだかとても嬉しい気持ちになって、自然と笑みがこぼれる……
きみと彼は、目を見つめ合い、笑顔をむけ合っている……
とても、とても、幸せな気持ちだ……」
目をとじたままの美冬の顔に、
はにかんだ笑みが浮かんだ。
恥ずかしそうではあるが、
すごく幸せそうな笑顔だった。
はにかんだ笑みが浮かんだ。
恥ずかしそうではあるが、
すごく幸せそうな笑顔だった。
「……いいだろう。それじゃ、ゆっくりと目をあけて」
「え……もう終わりですか?」
「あまりつづけると、僕の恋愛観を幸坂に押しつけることになってしまうからね。
ここから先は、幸坂が自分でイメージしないとね」
「はい、がんばってやってみます」
「いいね、前向きだね。
でもがんばる必要はないよ。楽しいことをイメージするんだからね。楽な気持ちで『快(かい)』を感じながらやればいいんだよ」
「はい」
「そして、幸せな恋愛のヴィジョンをしっかりともつようにね。
マンガや、ドラマや、映画のなかのシーンにいいヴィジョンが見つかったら、それをくり返し観るのもいいよね。ヒロインに自分を投影しながら観るのが秘訣だよ」
「はい。好きなマンガや映画を見直して、胸がキュンとするようなシーンをさがしてみます」
「次回までに、『幸せな恋愛をしている未来像』をもち、そのヴィジョンをくり返しイメージすること。
特に、幸せな恋愛をしている自分を重点的にイメージすること。いいね?」
「はい、がんばりま――って、がんばる必要ないんでしたね」
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