2018年12月17日月曜日

マユミと会話1(1)

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マユミと会話1 (プロムナード)



 プロムナード(遊歩道)の起点にあたる場所に、ガゼボが設置されている。
 柱と屋根だけでつくられた休憩所――壁のない開放的な建物のなかで、黒髪の女子高生がベンチに腰をおろしている。
 スクールコートの下に着ているのはセーラー服で、賢策たちがかよう永習館高校の制服とは異なっている。


「マユミ、待たせてごめん」

 賢策が声をかけると、黒髪の少女は微笑(ほほえ)みを返した。

「私もいまきたばかりなの。今日は遅くなるって賢策くんがメールをくれたから、私もゆっくりきたの」

 幸坂美冬の相談にのることを決めたとき、賢策はマユミに『今日は遅くなるから先に帰っていい』とメールを送っていた。

 それからほどなくして、マユミから『遅くなってもいいよ、私もゆっくり行くから』とメールが返ってきた。

 たしかに、事前に遅くなることはマユミに伝えてあった。
 しかし、マユミの「いまきたばかり」という言葉が事実かどうかはわからない。本当はだいぶ前からきていて、長いこと待っていた可能性もある。
 だが、もしそうだとしてもマユミはそれを口にだしたりはしない。賢策が気まずい思いをしないように「いまきたばかり」と言うに決まっている。

 マユミは、そういう女の子だった。

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