2018年12月24日月曜日

「ごめんね」のイメージ法 〈講義〉(1)

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「ごめんね」のイメージ法 〈講義〉



「いま話した自己肯定感に関する話はね、ある意味、前回やったイメージ法の『ネタばらし』でもあるんだ」

「ネタばらし、ですか?」

「前回、『幸せな恋愛』をイメージする、という方法をやったよね。
 あれはね、肯定暗示で使われる『自信獲得法』の前半部分なんだよ」

「自信獲得法……? あれって、わたしに自信をつけさせるためだったんですか?」

「そうだよ。
 あれはね、自己肯定感や、恋愛に対する肯定感を高めるテクニックなんだ」

「てっきり願望実現法なのかと思ってました。理事長がよく言っている『強く願ったことは実現する』っていう、アレなのかと……」

「たしかに、そう思われてもしかたないよね。前回やった方法は、願望実現のためのイメージ法とやり方がおなじだしね。
 でもね、『自信獲得法』には後半部分があるんだよ」

「後半……?」



「それじゃ、前回のように僕が誘導するから、僕の言うとおりにイメージして」

「はい」

幸坂美冬は目をとじた。

賢策は、
ゆったりとした穏(おだ)やかな口調で、
イメージを誘導する。

「いま、きみは、大好きな彼と一緒にいる――頭のなかでイメージして」

「はい」

「その大好きな男性と、きみは、交際している……まだ付き合いはじめたばかりの初々(ういうい)しいカップルだ……
 きみと彼は、とても仲がいい……
 まわりの人たちが羨(うらや)ましいって思うくらいに、とても仲がいい」

「…………」

「いま、きみと、彼は、目を見つめ合っている……
 とても、とても、愛(いと)しそうな目で、お互いに、目を見つめ合っている……」

目をとじた幸坂美冬の顔に
笑みが浮かんだ。
しっかりとイメージができているようだ。

「ところが、きみと彼は、ささいなことで喧嘩(けんか)をしてしまった」

「…………」

「彼とふたり、一緒にいても会話はない。お互いに不機嫌な顔で黙りこんでいる……
 とても、気まずい雰囲気だ……」

「……………………」

「大好きだった彼と、ささいなことで仲たがいをしてしまった……
 このままだと、ふたりの関係は終わってしまうかもしれない……」

「……嫌(いや)です、そんなの」

美冬は目をとじたまま訴えた。
悲しげな表情になっている。

「そうだね、このまま終わりになんてしたくないよね……
 だから、きみは、彼に謝(あやま)ることにした……」

「…………」

「きみはいま、彼とむかい合っている……彼はまだ怒っているらしく、とても不機嫌な様子だ……。
 きみは、勇気をだして彼に言う。『ごめんね』と……」

「…………」

「その言葉を聞いた彼は、様子が変わる……
 不機嫌だった顔はおだやかになり、そして、きみにこう言う。『俺のほうこそ、ごめん』と……」

「……………………」

美冬の口もとがほころび、
ほっとした笑みが浮かんだ。

「ちょっとした行きちがいで喧嘩をしてしまったけど、きみは、大好きな彼と仲直りをすることができた……
 そして、以前にも増して、きみと彼の仲は、深まったように感じる……
 イメージできたかい?」

「……はい」

「どんな気分?」

「よかったです、仲直りできて……ほっとしました」

「そうだね。仲直りできたときは、ほっとするよね。
 ……それじゃ、次のイメージにいくよ」

「はい」

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