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ツンデレ作戦はリスクが高い 〈講義〉
「それじゃ、次の話をしよう。
世の中には、恋愛に関するテクニックとして『ツンデレがいい』と説(と)いている人たちがいる。
でもね、僕は『ツンデレ作戦はやめたほうがいい』と思っている。リスクが高すぎるからね」
「ツンデレ作戦というと、『はじめはツンツンして、だんだんデレデレになっていく』ってことですか？」
「そうだね。
ツンデレの定義は意外とたくさんあってけっこうまぎらわしいんだけど、ここで言うツンデレは、いま幸坂が言ったとおりだよ。
はじめは敵対的な態度をとり、何かをきっかけに好意的な態度へ変わっていく――
一般的な解釈では、それがツンデレだよね。
でね、恋愛についてアドバイスをしている人のなかには、ツンデレが効果的だと説いている人がいるんだ。
こういう人たちはたいがい『ゲイン・ロス効果』を根拠に、ツンデレ作戦を肯定しているんだよ」
「ゲイン・ロス効果？」
「ゲイン・ロス効果っていうのは、心理学で使われている用語だよ。
ゲインは『利益』、ロスは『喪失』という意味の英語。
最初にわるい印象を与えていた場合、そのあとにイメージ・アップになることをすると、急激に評価があがる――
そんなふうにして評価や好感度を獲得(かくとく)することを『ゲイン効果』と言う。
逆に、最初にいい印象を与えていた場合、そのあとになんらかの失敗やイメージ・ダウンになるようなことをすると、その人の評価が一気に下落する――
そんなふうにして評価や好感度をうしなうことを『ロス効果』と言う。
『ゲイン・ロス効果』はこの両方を合わせた言葉だけど、一般的に『ゲイン・ロス効果』と言えばゲインのほう――最初はわるい印象からはいり、そのあとにいい印象を与えることで評価があがることを指しているんだ」
「それって、ツンデレそのものですね」
「そうだね。
心理学にこんな理論があるから、この理論を根拠にして、恋愛で意図的(いとてき)にツンデレをやることをすすめる人たちがいるんだよ。
たしかに、恋愛においても『ゲイン・ロス効果』がはたらく可能性はある。だけど、その可能性はとても低い。むしろ、恋愛のチャンスを台無しにしてしまう可能性のほうがずっと高いんだ」
「……どういうことですか？」
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