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「まあ、あくまでも都市伝説ではあるんですけど――」
ひよりは言う。
「でも、実際にお姉ちゃんが別人になったという事実がある以上、フィクションじゃない可能性が高くなりました。ウチのお姉ちゃん、嘘(うそ)をつくような人じゃないですし。
もし、恋愛のことで涙がでるほどつらい想いをしているのなら、『スドー・ケンサク』をさがしてみたらいいですよ。真剣に願えば、『スドー・ケンサク』はきっと知子先輩の前にあらわれてくれるはずです」
「……………………」
「それじゃ先輩、ひよりはこれで」
そう言って、幸坂ひよりは部室から去っていった。
いいことをしたあとは気持ちがいいなぁ、といわんばかりの満足げな足どりで。
「もう、なんだったの、いったい……」
知子はすっかり気がぬけてしまった。
「あらわれてくれるも何も、3年A組にいけば須藤先輩には会えるじゃない」
いまさらながら、ひよりの勘(かん)ちがいにツッコミをいれる。
そして、思う。
「須藤先輩に相談か……」
知子にとって須藤賢策先輩は、遠くから見て「うわぁ、かっこいいなぁ」と憧(あこが)れるだけの存在だった。直接話しかけるなんて、そんな大(だい)それたことは考えたこともなかった。
でも――
「……おもいきって、相談してみようかな」
※知子の恋愛相談については、続編の『どうして彼からのメールや電話がこなくなるのか?』をご閲覧ください。
→目次 『どうして彼からのメールや電話がこなくなるのか?』
参考資料