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「第1回目の講義のときに『プロセスがある』という話をしたはずですけど、すでに恋人同士であるかのように振る舞うのって、なんだか矛盾(むじゅん)していませんか?」
「そう、そのとおりだよ! よく気づいたね、すばらしいよ!」
幸坂美冬は驚いた顔をしている。
なぜそんなに褒(ほ)められているのか
わからないといった様子(ようす)だ。
なぜそんなに褒(ほ)められているのか
わからないといった様子(ようす)だ。
賢策は興奮した声で、
言葉をつづける。
言葉をつづける。
「そう、それこそが、潜在意識の力、心の力を使って夢や願望をかなえる秘訣(ひけつ)なんだ!
それは矛盾であり、逆説なんだよ!
だからこそ気づく人は少ない。そしてこれを実践(じっせん)できる人はもっと少ない。
でも、この矛盾、この逆説――パラドックスこそが、心の世界における真実なんだ!」
「……な、なんだか、すごいことなんですね」
「そう、すごいことだよ。でも気おくれする必要はない。とてもシンプルなことだからね。
それに、結果を重視する人たちのあいだでは、意外と知られていることだしね」
「そうなんですか?」
「そうだよ。結果をだせる人というのは、たいがいこのパラドックスに気づいて活用してるんだ。
たとえば、僕のクラスメートにカツオという男がいるんだけど、カツオはいまプロボクサーを目指して毎日ボクシングジムにかよっている。
そして、担当のトレーナーは、カツオにプロボクサーとおなじ練習量と練習内容を課しているという。
カツオはプロ志望ではあるけど、まだ入門して数ヶ月の練習生にすぎない。
にもかかわらず、トレーナーはカツオにプロとまったくおなじ練習をさせているんだ。
そしてその理由について、トレーナーはこう言ったそうだ。
『プロになってからプロの練習をすればいいと考えているやつは、プロにはなれない。練習生のときからプロとおなじ練習をするやつがプロになれるんだ』
さすがだよね! プロの世界、結果の世界で生きている人は、本質をよく見ぬいているよね。
望みどおりの結果をだしたいのであれば、世間一般で考えられていることは逆だということに気づかなければいけないんだ」
「…………」
「いいかい――もし、『恋人同士のように振る舞うのは、正式に交際するようになってから』と考えているのであれば、それは順番が逆だよ。
事実は、『その相手とすでに恋人同士のように振る舞える人が、その相手と正式に交際できるようになる』なんだ。
要するに『いま』なんだよ。
そしてこれこそが『成就する恋愛の王道』なんだ」
「………………」
「どうしたんだい、また黙りこんでいるけど?」
「……なんて言うか、意外すぎて言葉がないんです。順番が逆だなんて、考えたこともなかったから」
「わかってしまえば単純なことだよ。
ものごとにはすべてにおいてプロセスがある。そのプロセスをしっかりと理解している者こそ、このプロセスを逆に使うことができる。
つまり逆算的に『最高の結果』を選択し、それを『いま』行動にうつすんだよ。
これは恋愛にかぎらず、夢や目標をかなえるときにはいつだって有効な方法なんだ。
本当に冴(さ)えたやり方だよね。
まさに『王道』と呼ぶにふさわしいよね」
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