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「そのまま、次のイメージにいくよ。
きみは、いま、ひとりでショッピングを楽しんでいる……
きみは、気にいったものがたくさん見つかり、予定よりも少し多く買い物をした……
そのため、きみはいま、たくさんの買い物袋をもっている……さすがにちょっと重たいな、と、きみは思う……
そこへ、きみの大好きな彼が、偶然とおりかかる……
『こんなところで会うなんて奇遇(きぐう)だね』と、彼は言う……
そして、きみがたくさんの買い物袋を重そうにもっているのを見て、きみにこう言う。
『俺が、もってあげるよ』
……イメージしてるかい?」
「はい」
「どんな気分?」
「……わたしに気をつかってくれて嬉しいです。
でも、彼にあまえるのは、なんだかわるいような気がします。荷物、重たいし……」
「そうだね。申し訳なく思う気持ちは大切だよね。
でもここは、彼の好意にあまえよう。
イメージして――
きみは、彼の好意を嬉しく思い、荷物をもってもらうことにした……
きみは、彼に買い物袋を手渡し、微笑みながら言う。
『ありがとう』
彼は、きみの嬉しそうな笑顔と、きみの『ありがとう』の言葉を嬉しく思い、ちょっと照れくさいような、それでいてどことなく誇らしげな様子で、微笑みを浮かべる……」
「…………」
「それじゃ、もうひとつイメージするよ。
きみはいま、大好きな彼と、ふたりで肩をならべて歩いている……
デートというほどのものではないけど、こうしてふたりだけの時間をすごせていることに、きみも、彼も、安らぎを感じている……
穏(おだ)やかで、幸せなひとときだ……
しばらく歩いていると、道の脇(わき)に、自動販売機が見えてきた……
きみは、そういえば喉(のど)がかわいたな、と思う……
そのことを察したかのように、彼は、『何か飲もうか』と言い、自動販売機のところへ行く……
彼はまず、自分が飲むものを買う……
それから、きみにむかって、こう尋ねる。
『飲みたいの、どれ?』
彼は、きみから飲みたいものを聞きだして、それを自分で買おうとしている……
さて、どうする?」
「そんな、おごってもらったりしたらわるいです。自分で買います」
「そうだね。お金をだしてもらったりしたら申し訳ないよね。
でもここは、彼の好意にあまえよう。
イメージして――
きみは、彼の好意を嬉しく思う……
そして、きみが飲みたいものを、彼に告(つ)げる……
彼は、きみのぶんの飲み物を購入し、それをきみに手渡す……
きみは、それを受けとり、微笑みながら言う。
『ありがとう』
彼は、きみの嬉しそうな笑顔と、きみの『ありがとう』の言葉を嬉しく思い、ちょっと照れくさいような、それでいてどことなく誇らしげな様子で、微笑みを浮かべる……」
「…………」
美冬の口もとがほころび、
笑みがこぼれた。
賢策の顔にも、
満足げな笑みがこぼれる。
笑みがこぼれた。
賢策の顔にも、
満足げな笑みがこぼれる。
「オーケー。それじゃ、ゆっくりと目をあけて」
「はい」
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