2019年1月7日月曜日

「ありがとう」のイメージ法 〈講義〉(2)

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「そのまま、次のイメージにいくよ。

 きみは、いま、ひとりでショッピングを楽しんでいる……
 きみは、気にいったものがたくさん見つかり、予定よりも少し多く買い物をした……
 そのため、きみはいま、たくさんの買い物袋をもっている……さすがにちょっと重たいな、と、きみは思う……

 そこへ、きみの大好きな彼が、偶然とおりかかる……
『こんなところで会うなんて奇遇(きぐう)だね』と、彼は言う……
 そして、きみがたくさんの買い物袋を重そうにもっているのを見て、きみにこう言う。
『俺が、もってあげるよ』

 ……イメージしてるかい?」

「はい」

「どんな気分?」

「……わたしに気をつかってくれて嬉しいです。
 でも、彼にあまえるのは、なんだかわるいような気がします。荷物、重たいし……」

「そうだね。申し訳なく思う気持ちは大切だよね。
 でもここは、彼の好意にあまえよう。

 イメージして――

 きみは、彼の好意を嬉しく思い、荷物をもってもらうことにした……
 きみは、彼に買い物袋を手渡し、微笑みながら言う。
『ありがとう』

 彼は、きみの嬉しそうな笑顔と、きみの『ありがとう』の言葉を嬉しく思い、ちょっと照れくさいような、それでいてどことなく誇らしげな様子で、微笑みを浮かべる……」

「…………」



「それじゃ、もうひとつイメージするよ。

 きみはいま、大好きな彼と、ふたりで肩をならべて歩いている……
 デートというほどのものではないけど、こうしてふたりだけの時間をすごせていることに、きみも、彼も、安らぎを感じている……
 穏(おだ)やかで、幸せなひとときだ……

 しばらく歩いていると、道の脇(わき)に、自動販売機が見えてきた……
 きみは、そういえば喉(のど)がかわいたな、と思う……
 そのことを察したかのように、彼は、『何か飲もうか』と言い、自動販売機のところへ行く……

 彼はまず、自分が飲むものを買う……
 それから、きみにむかって、こう尋ねる。
『飲みたいの、どれ?』

 彼は、きみから飲みたいものを聞きだして、それを自分で買おうとしている……
 さて、どうする?」

「そんな、おごってもらったりしたらわるいです。自分で買います」

「そうだね。お金をだしてもらったりしたら申し訳ないよね。
 でもここは、彼の好意にあまえよう。

 イメージして――

 きみは、彼の好意を嬉しく思う……
 そして、きみが飲みたいものを、彼に告(つ)げる……

 彼は、きみのぶんの飲み物を購入し、それをきみに手渡す……
 きみは、それを受けとり、微笑みながら言う。
『ありがとう』

 彼は、きみの嬉しそうな笑顔と、きみの『ありがとう』の言葉を嬉しく思い、ちょっと照れくさいような、それでいてどことなく誇らしげな様子で、微笑みを浮かべる……」

「…………」

美冬の口もとがほころび、
笑みがこぼれた。

賢策の顔にも、
満足げな笑みがこぼれる。

「オーケー。それじゃ、ゆっくりと目をあけて」

「はい」

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