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2 メールや電話をしなくなる男性心理(その二)
「相内さんのケースについて説明する前に、男性の基本的な心理傾向について話しておこう。
すこし遠回りになるけど、この問題を解消するには男性心理を深く理解することが不可欠だからね。よく聞いて理解してほしいな」
「はい」
「まず、これは絶対におぼえていてほしい――
『男性脳は、能力や結果を重視する心理傾向がある』
ということをね」
「能力や結果、ですか?」
「そう、男性脳は『目的を達成する能力』があることを尊(とうと)び、それを高めるために奮闘し、それがあることを誇(ほこ)りに思うものなんだ。
男というのはいつだって『自分はできる男だ』と思いたがっているんだよ、潜在的にね」
「あのぅ、須藤先輩……それが、メールや電話をしなくなることと、どんな関係があるんですか?」
「おおいに関係あるよ。
男性は自分自身に対して『できる男』でありたいと願っている。そしてそれは、『自分の力で成しとげたい』という潜在的な欲求を生みだす。
『自分の力で』という部分が、男性にとっては何よりも重要なんだ。
だから、たとえ目標を達成できたとしても、他人の助けをかりてしまったら、喜びは激減する。
男性は、自分の力で成しとげることに喜びを感じる生き物なんだ。
このことを理解していると、男女間における摩擦(まさつ)をおおはばにへらすことができるんだよ。
たとえば、相内さん――」
「はい?」
「相内さんは、自分の悩みを解決するために、僕に相談をしてきたよね?」
「はい」
「男性の場合は、あまりそういうことはしないんだよ」
「そうなんですか?」
「男性は、他人に助けてもらうことを快(こころよ)く思わない生き物なんだ。
だから、男性は悩みや問題をかかえていても、他人には相談しない。自分の問題は、自分の力で解決しようとする。
人に打ち明けたりはせずに、内側にかかえ込んで、自分ひとりの力で解決しようとする。
その姿勢は、どうしても他人の助けが必要になるまでかたくなに貫(つらぬ)かれるんだ。他人の助けをかりてしまったら自分の能力のなさを認めることになってしまう、と、潜在的に不安を感じているからね。
つまり、男性が誰かに相談をするのは、恥をさらしてでも助けをかりたい、というところまで切羽(せっぱ)つまってからなんだよ。
女性の場合は、何か悩みごとがあると、友人や信頼できる人に打ち明けようと考える。誰かに話し、共感してもらうことで、ストレスを軽減させようとする。
でも、男性の場合は逆なんだ。口をとざし、内に籠(こ)もり、ひとりで問題とむき合おうとする。
男性脳は、言葉によるコミュニケーションをそれほど重視してはいない。だから、男性というのは基本的に口下手(くちべた)だし、無口になりやすいんだよ。
女性の場合は、会話がとぎれたり沈黙が流れたりすると不安になるけど、男性はそうじゃない。『特に話すべきことがないのなら、話さなくていい』と感じている。
女性は、男性のだんまりを不満に思うかもしれないけど……男性というのは、そういうものなんだよ」
「なるほど……。
あっ、そうか! だから、男性はメールや電話をしなくなりがちなんですね。人に相談するのが好きじゃないから」
「そうだね、それも連絡が途絶(とだ)える理由のひとつだよね。
男性は自分のことをあまり話したがらない。恋人に対してはいっそう無口になることだってある。女性に相談するのは情けなくてかっこわるいことだと感じているからね。
男性は、彼女にとって頼れるヒーローでありたい、と心の奥深いところで願っている。だから、自分の弱さをさらけだすようなまねはしたくない。
そして男は、恋人に対して口をとざし、恋人とコミュニケーションをとらなくなってしまう。
――そういったことは、よくあることなんだよ」
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