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「さっきも言ったけど、男性というのは能力や結果を重視していて、『目標達成』や『問題の解決』を潜在的に強く求めているんだよ。
この男性特有の価値観は、恋愛がうまくいっているときに、『いまは何も問題はないのだから、何もする必要はない』という考え方を呼び起こす。
そして男性は、メールや電話によるコミュニケーションを『必要ない』と判断するんだ。
相内さんの彼が付き合いはじめたとたんにメールや電話をしなくなった理由――
それは、この男性心理によるものだと思うよ」
「なんて言うか、ショックです……恋愛がうまくいってるときほど連絡をしなくなるなんて思いもよらなかったし、にわかには受けいれがたいです」
「直接会っているときの彼は、とても好意的に接してくれる。
ふたりの関係はとても良好に思える。
それなのに、彼からのメールや電話がこない――
このような事態に直面すると、女性のほうはやっぱり不安になるよね。
何かいけないことをしてしまったんだろうか、うっかり嫌われるようなことを言ってしまったんだろうか、もしかしたらほかに好きな人ができたのかもしれない……
良くない考えばかりが頭のなかをうずまいて、ネガティブな思いにとらわれてしまう。
でも実際は、彼の愛情が冷めてしまったわけでも、恋人に対して無関心になったわけでもないんだ。
相内さん、これだけは忘れないでほしい。
彼は、相内さんのことをとても大切に想(おも)っている。そして、ふたりの関係がうまくいっていることを心から嬉しく思っている。それはたしかだよ。
だからこそ、彼は安心して、メールや電話がおろそかになっているんだよ。
男性は、『メールや電話は要件を伝えるための手段』というふうに認識している。だから、特に急いで伝える用がないのであればメールや電話をしない――
それが、男性というものなんだよ」
「そうなんですか……。
あ、でも、おかしくないですか? だって、付き合う前は毎日のように彼からのメールや電話がきてたんですよ。
男の人は用がなければメールや電話をしないはずなのに、どうして付き合う前は毎日のようにメールをしてくれてたんですか?」
「それは、正式に付き合う以前は、彼にとって恋愛が『未解決の問題』だったからだよ。
彼は相内さんに好意をもっていた。付き合いたいと願っていた。そしてそれは、彼のなかで『未解決の問題』として認識され、達成すべき目標となる。
男性脳は『結果』を潜在的に求めているからね。未解決の問題やまだ達成されていない目標があると躍起(やっき)になって行動するんだ。
その男性心理ゆえに、彼はまめにメールや電話をしていたんだと思うよ、『相内さんと仲良くなる』という目標を達成するためにね」
「それじゃ、付き合うようになったら目標はもう達成できたから、メールや電話はしなくていいってことですか?」
「まあ、そういうことだよね、男性脳の考え方は」
「ひどいです、そんなの! 自分勝手です!」
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