2019年2月26日火曜日

3 対処法(その一)

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3 対処法(その一)



「この問題の解決策として、『男性とは、そういうものだ』と受けいれる方法が、まず第一に挙(あ)げられるよね」

「……先輩、それって解決になってるんですか?」

「たしかに、消極的な解決策に思えるよね。
 でもね、これはけっこう奥深いことなんだよ。
 というのも、交際を長くつづけている女性の多くが、男性の性質を受けいれることで摩擦(まさつ)を解消しているのだからね」

「そうなんですか?」

「良好な関係を持続できるカップルというのは、相手を変えようとするのではなく、『自分のほうが変わってあげよう』という姿勢をもっている人たちなんだ。
 これは、良好な人間関係をきずく秘訣(ひけつ)とも言えることだよね。

 交際を長くつづけられる女性というのは、メールや電話がこなくなっても彼を責(せ)めたり、彼を変えようとはしない。
 逆に、自分の考え方や解釈のほうを変える。『男性というのはメールや電話をあまりしないものだ』ということを理解して、受けいれる。そうすることで彼への不満をしずめ、良好な関係をたもっているんだ。
 長期的な交際をつづけている女性の多くが、そうやってこの問題を克服しているんだよ、実際にね」

「うぅぅぅぅん……なんだか、女性ばかりが我慢(がまん)をしいられてるみたいで、いまいち納得できないです」

「相手を受けいれて自分のほうが変わってあげる――というのは、もちろん女性の側(がわ)にかぎったことじゃないよ。
 男性のほうもおなじで、彼女に対する不満や期待があっても、相手を自分の思いどおりにコントロールしようとはせずに、受けいれることで摩擦をへらしている。
 良好な関係を長期にわたって維持できるカップルのほとんどが、男女ともにそれを実践(じっせん)しているものなんだよ。

 といっても、どうしても受けいれられないことの場合は、ムリをして我慢する必要なんてないよね。そういうときは、はっきりと自分の意思を伝えたらいい。場合によっては憤(いきどお)ったほうがいいことだってある。
 要するに、『少々のことは目をつむってあげて、相手のいいところに意識の焦点(しょうてん)を合わせる』ということだよね。
 これは、人間関係の基本だよね」

「たしかに、先輩の言うとおりかもしれません。相手の欠点に目をつむってあげることで、仲のいい関係をたもつ――友だち同士だと実際にやっていることですしね。
 でも、相手が彼氏だと、なかなかうまくできなかったりします。どうしてなんでしょう?」

「それはね、恋人に対しては特別な期待があるからだよ。
 恋人というのは、この世でただひとり、特別な異性として選んだ相手だからね。とうぜん、特別な想(おも)いがある。だからこそ『こうであってほしい』という期待も大きくなる。

 期待が大きいからこそ、自分の期待とちがう面が見えてしまうと、大きな不満がわきあがってくる。ひどく傷ついたような気持ちになる。この不快感を解消するには相手を変えて期待どおりになってもらうしかない、と強く感じるようになる。
 これじゃ、目をつむってあげるのはむずかしいよね」

「……先輩の言うとおりだと思います。そう、彼はわたしにとって特別な人です。この世界でただひとりの特別な人なんです。
 だから、『彼氏としてこうあってほしい』という期待を心の奥深いところでいだいてるんだと思います。
 彼氏なんだからまめに連絡をして、わたしにさびしい思いをさせないでほしい――わたしは彼にそう期待して、不満をいだき、心のなかで彼を責めてるんだと思います。
 …………。
 ………………。
 ……………………。
 ……わたし、いま自分で話していて気づきました。わたしが悩み、傷ついているのは、自分のせいなんだって。
 もとはと言えば、わたしが勝手な期待を彼に押しつけていたからなんだって」

「そうだね、よく気づいたね。
 相内さんを苦悩させている本当の原因は、ではなく、相内さんの彼に対する期待なんだ。だから、彼を期待どおりにしようとする思いを解消してしまえば、心は安らぐ。
 そして、期待を解消する最善の方法は、やっぱり受けいれることだよね。『男性とは、そういうものなんだ』ってね」

「……わたし、受けいれます! 彼からのメールや電話がこないことを受けいれます!
 いまならきっとできると思います。だって、彼が連絡をしないのは悪気(わるぎ)があるわけでも愛情が冷めたわけでもないって、いまのわたしはもう知ってるから――」

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